成人式のような人生で一度きりしかない行事や、結婚式・入学式・卒業式といった人生の節目となる機会には、振袖などの晴れ着を着たいという人が多いでしょう。
しかし、着物を着る日の天気がいつもよいとは限りません。では、雨が降りそうな日や雨・雪が多い季節に着物を着る場合は、どのような対策を取ればよいのでしょうか。
この記事では、雨の日の外出で振袖の濡れを最小限にする方法や、振袖におすすめの雨対策アイテムについて解説します。雨でお気に入りの振袖が濡れてしまった場合の対処法も併せて確認し、天候の悪い日でも心置きなく和服を楽しみましょう。
目次
1.雨で振袖を濡らさないための方法
雨の日に振袖でお出掛けすると、洋服の場合と同様に雨で多少は濡れてしまいます。しかし、大切な振袖はできる限り汚したくないと考える人がほとんどでしょう。
雨の日における振袖の汚れを防ぐためには、まずは着物を雨で濡らさないための工夫を行う必要があります。ここでは、雨で振袖を濡らさない方法を2つ紹介します。
1-1.振袖の裾を捲り持ち上げる
雨の日に着物用の雨コートを利用する場合、振袖の裾を捲って上に持ち上げ、着物クリップや洗濯ばさみなどで帯に留めておくと、裾が雨水や泥で汚れないため安心です。
雨コートの上からは裾を捲り上げている様子は分かりませんが、現地に着いて雨コートを脱ぐ前に、着物クリップを外して裾を下ろすことを忘れないようにしましょう。
1-2.内股かつ歩幅を小さくして歩く
雨の日に晴れた日と同じ歩き方で歩くと、足を蹴り上げた際に雨水や泥水が撥ねて、着物の裾や足袋のかかと部分に付着してしまう場合があります。足元の雨水・泥水対策として、雨の日は歩き方に注意しましょう。
雨水・泥水をガードするためには、内股かつ歩幅を小さくして歩くことがポイントです。いつもより、爪先に力を入れるようにして歩きましょう。急いでいると難しい歩き方であるため、雨の日でも晴れた日でも余裕をもって出掛けることが大切です。
2.雨の日に振袖で出掛ける際におすすめのアイテム
雨の日に振袖を着てお出掛けする場合、着物のまとめ方や歩き方だけではなく、便利なアイテムを活用することも、スムーズな外出を楽しむためのポイントです。
ここでは、雨の日に振袖で外出する際に準備するとよいアイテムを5つ紹介します。これらのアイテムを上手に使い、雨の日でも楽しく振袖でお出掛けしましょう。
2-1.雨傘
雨傘は、洋服の場合でも雨の日の必需品です。雨の日に振袖で出掛ける場合も、手持ちの洋傘で構いませんが、和装にこだわりたい人は、振袖姿を引き立たせる和装用の雨傘を用意しておくとよいでしょう。
和装用傘には、骨の数が多い和風のものや、レトロな柄・デザインのもの、竹骨に布や紙を張ったものなどがあります。色の種類も様々で、紺碧色やあずき色、若葉色など和装に合うものが豊富にあるため、自分の好みや振袖のコーデと合わせて選択しましょう。
振袖を濡らさないための傘を選ぶ際には、大きさに注目することも大切です。肩に雨のしずくが落ちてしまわないよう、大きめの傘を選んでください。
2-2.雨コート
雨コートは、防水加工・撥水加工された着物用のレインコートです。コート素材はポリエステルで撥水性の高いものが多く、着用することで振袖を水濡れや泥汚れから守ってくれます。
肩から裾まで一体となっている「一部式タイプ(オールインワンタイプ)」が一般的です。ただし天候によっては、上下に分かれていて着丈が調節しやすい「二部式タイプ」のほうが向いている場合があるため、状況に応じて使い分けましょう。
最も汚れやすい足元をカバーするために、裾まで隠れるようなコート丈のものを選ぶことをおすすめします。
2-3.雨草履
着物で外出する場合の履物といえば、多くの人は足袋と草履のセットを選ぶでしょう。雨の日の外出では足袋も草履も汚れやすいため、合皮やエナメル、ビニールなどといった素材の雨草履(撥水草履)でお出掛けすることをおすすめします。
ただし、成人式や入学式、結婚式などといったフォーマルな場では、雨の日でも一般的な草履を履くことがマナーとされています。
移動時のみ雨草履を活用し目的地に到着後、一般的な草履に履き替えましょう。また、草履を濡らさないためのグッズである草履カバーもおすすめです。
2-4.撥水加工の足袋
雨の日は草履と同様に、足袋も汚れやすくなります。雨の日には、撥水加工された足袋や足袋ソックスを活用してください。小雨であれば足袋カバーがおすすめです。
これらのアイテムを利用する際には、目的地に到着した後は一般的な足袋に履き替えましょう。荷物の中に普通の足袋を持参することを忘れないようにしてください。
2-5.ポリエステル素材の振袖
着物が絹素材の場合、雨に濡れたり泥が付着したりすると、シミとなったり縮んでしまったりする恐れがあります。雨に濡れることが心配な場合は、ポリエステル素材など水や汚れに強い撥水タイプの振袖を選びましょう。
ポリエステル素材の着物は、汚れても家庭で丸洗いできるため、絹などの天然素材と比べて比較的簡単にお手入れが行えます。また、雨の日の汚れだけではなく、飲食によって生じる汚れの手入れも行いやすいため、振袖を着たまま食事を行う場合にもおすすめです。
3.防水スプレーによる振袖への撥水加工はNG
振袖を雨の汚れから守る方法には、歩き方や雨対策アイテムの活用以外に、「着物に撥水加工を施す」という手段があります。
しかし、皮用・布用などといった一般的な防水スプレーを正絹の振袖に使用すると、シミを作ってしまう恐れがあるため注意が必要です。
また、振袖専用の防水スプレーを正絹の振袖に使用した場合でも、着物の染色方法によってはシミとなってしまう場合があるため気をつけましょう。
振袖専用の防水スプレーで撥水加工を施す場合は、使用前に説明書を必ず読み、目立たない部分で試してからスプレーを使用してください。ただし、ムラができてしまうことがあるため、撥水加工などの特殊コーティングは可能な限りプロに任せることをおすすめします。
4.雨で振袖が濡れてしまった場合の対処法
歩き方に気をつけたり、雨対策アイテムを活用したりしていても、雨の日には振袖が濡れてしまったり泥が撥ねてしまったりすることは、ゼロではありません。振袖が雨で濡れてしまった場合は、慌てずに落ち着いて対処することが大切です。
ここでは、雨で振袖が濡れてしまった場合の対処法を3つ紹介します。濡れ方や汚れ方の状況に応じて適切な対処が取れるように、対処法や注意点を確認しておきましょう。
4-1.小雨で少しだけ濡れた場合
軽く小雨が降り、着物が少しだけ濡れてしまった場合には、乾いたハンカチなどで濡れた場所を軽く叩くようにして水分を取ってください。
ハンカチなどで水分を吸収した後は、室内の風通しがよい場所に振袖を掛けて、湿気をできるだけ取り除きます。雨が止んだ後は、屋外で半日以上陰干しして、しっかりと自然乾燥させましょう。
屋外での乾燥が難しい場合は、エアコンを掛けた室内で十分に陰干しします。振袖がよく乾いた後は、着物全体の確認を行い、シミがないかどうかチェックしてください。
4-2.大雨でしっかりと濡れた場合
「裾や袖全体が濡れている」「触ると手が濡れる」など、しっかりと雨で濡れた場合には、着物に縮み・色落ち・色にじみが発生してしまう恐れがあります。
大雨などでしっかりと振袖が濡れてしまった場合、まずはタオルなどで水分をできる限り取り除きましょう。その後は、可能な限り早く呉服店や振袖対応のクリーニング店に持参して、確認してもらうことをおすすめします。
自己判断での対処はかえって状態が悪くなってしまう場合があるため、必ず専門家に見てもらいましょう。
4-3.雨水を含んだ泥ハネで汚れた場合
雨水を含んだ泥が振袖に撥ねてしまった場合、汚れた直後に慌てて触ってしまわないようにすることが重要です。雨水の水分はハンカチなどでしっかりと取り除き、泥の汚れは帰宅後に着物を半日以上陰干しして乾燥させてから対応しましょう。
泥ハネによる汚れを落とす際には、服用の毛質が柔らかなブラシを使用し、乾いた着物の生地から少しずつ泥をかき出すようにして取り除くことがポイントです。ブラシはゆっくりと一方向に動かし、生地を傷めないようにしましょう。
泥による汚れが落ちない場合は、呉服店や振袖対応のクリーニング店などに相談してください。レンタルの場合は、レンタルした業者に相談してみましょう。
まとめ
振袖はデリケートな素材でできているものが多く、雨に濡れるとシミや縮みの原因となってしまう場合があります。雨の日に振袖で出掛ける際には、雨コートや雨草履といった雨対策アイテムを活用しましょう。
雨で振袖が濡れてしまった場合は、乾いたハンカチで水分を取るなどの応急処置を行った上で、陰干しで十分に乾かすことがポイントです。自宅で行える方法で汚れが落ちなかった場合は、無理せずプロに任せることをおすすめします。
振袖が濡れてしまった場合の正しい対処法を把握し、雨の日でも安心して振袖を楽しみましょう。