振袖に描かれた9つの柄に込められた意味とは?

着物には、いろいろな絵柄が描かれています。柄は大きく分けて古典柄、モダン柄、新古典柄の3種類に分けられますが、それぞれに色々な図柄が描かれ、意味を持っています。そこで、着物によく描かれる柄について、どんな意味を持っているのかご紹介します。

1.振袖・着物に描かれた柄の意味は?

①椿

椿は着物に描かれる「草花文(くさばなもん)」の一つで、非常にたくさん描かれているポピュラーな文様です。椿文には、遠州椿や籠目に椿を描く籠目椿、枝についた椿を描いた枝椿などの種類があります。

 

椿は季節としては春を表す花です。椿は花だけが首からぽとりと落ちるので、武家の間では縁起がよくない花ともされていましたが、一方で椿油のように素晴らしい副産物をもたらす花でもあるため、神秘的な力を秘めた花とされてきました。この意味で、永遠の美といった意味が込められていると考えられます。

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椿のデザインは和物では着物以外にも多く扱われてきました。花弁が少なくシンプルで清楚な花は、長い冬を経て春の訪れを知らせる花でもあり、季節の移ろいを大事にする日本人に愛されてきた花です。

②薔薇

バラは「モダン柄」と呼ばれる柄の一つです。モダン柄というのは流行の色柄を使ったもので、いろいろなデザインが自由に描かれます。バラや蝶、ハートといった可愛いものからヒョウ柄のように大人びたものまで実にさまざまで個性あふれるデザインがあります。若い女性が着る振袖の柄として、モダン柄は人気です。

 

モダン柄は西洋から入ってきたデザインなので、和柄のように季節を問いません。バラは本来5月頃から初夏にかけて咲く花ですが、着物に使われる場合は一年を通していつ着てもよいとされています。女性の美しさや華やかさ、艶やかさなどオールマイティな意味が込められています。モダン柄ですが、実際のデザインはいろいろで、ゴージャスなバラもあればシックでシンプルなバラもたくさんあります。

バラの意味を西洋的に考えた場合には、花色によって意味が異なってきます。赤いバラは愛・情熱、白いバラは純潔、ピンクのバラはしとやかさ、黄色いバラは友情を表します。

③牡丹

ボタンは「吉祥文様(きっしょうもんよう)」と呼ばれる文様の一つです。吉祥文様は縁起が良いとされている古典的な柄でおめでたいということで好まれる柄をいいます。長寿を意味する鶴や亀、鳳凰、松竹梅などが有名です。

 

牡丹は、古くから「百花の王」とも称される花です。日本では「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花」と昔から女性の美しさを表現してきました。牡丹は古くは唐草文様にも使われ、花びらが大きくて多いので、高貴さや富貴さ、美しさを意味するものとして愛されてきた花です。

着物に描かれる花はそれぞれ四季があり、季節に合わせた着物を少し先取りして着るのがマナーとされています。ボタンは桜や梅、椿とともに春を表す花です(桜は四季を問わず、一年を通して着られます)。

④桜

桜もしくは桜文(さくらもん)は、平安時代から日本人に愛され親しまれている日本を象徴する花の絵柄の一つです。日本の花でもある桜を古典柄として描くときには、薬玉(やくぎょく)柄とされ、薬を入れていた魔よけの飾りが起源となっています。
桜の「さ・くら」には古来からの言い伝えがあり、五穀豊穣の象徴としても知られています。「さ」には“稲”の意味が、「くら」には神が座る(宿る)作物の蔵の意味があるため、桜の開花時期に五穀豊穣を願って花見をしながら宴を開くのはとても重要なことといわれてきたのです。

 

桜の咲く時期は3月から4月のため春の花とされていますが、春夏秋冬問わず身に着けることのできる着物の柄です。春にはたくさんの花が芽吹くため、春の花の象徴でもある桜は縁起の良いことの始まりを意味するとされています。

2.振袖の柄で花柄以外にはどんなのがある?

①鶴

延命長寿の象徴とされる瑞鳥は、品格あふれる姿から「吉祥文様」として、婚礼衣装に多く用いられます。「瑞雲」を背景に、吉祥の意味を含む「松(寒さに負けず緑を生やし続ける長寿の樹)」や「亀(万年と表現されるような長寿など)」と共に描かれています。

「鶴は千年」ともいわれるように、長寿や生命力の豊かさを意味する鳥として重宝されてきました。そのため、長い幸せを運ぶ鳥として親しまれています。正月や慶事など、特に幸せを願う時に着用されるアイテムに描かれている柄の一つとして使用されてきた柄です。一般的に縁起がよい柄とされ、不老長寿を願う柄付けという意味合いもあります。

鶴の特徴は、一度結ばれると、生涯を共に添い遂げる夫婦として、つがいとして生きていくこと。そのため、結婚式に着用される打掛や白無垢にも、刺繍や染めで描かれています。また、振袖を着用することを計画される場合にも、鶴が描かれていることを勧められることもあるでしょう。

②蝶

蝶は「古典柄」でもあり、「モダン柄」でもあります。振袖では西洋的な蝶が描かれることが多いですが、実は古くから使われてきた図柄です。蝶はアオムシからさなぎへ、さなぎから成虫へ姿を変えて大きくなります。そして、最後には飛び立つので、天昇する縁起の良いものとされてきました。また、蝶=長寿という意味もあります。

新旧でデザインの違いは、モダン柄のほうがより豪華な蝶が描かれることです。華やかで凝ったデザインの蝶が大きく描かれることが多いようです。

3.振袖で高い柄とは?

振袖の「辻が花をご存知ですか?初めて描かれたのは室町時代や奈良時代ともいわれる「辻が花」。花をモチーフにし、独特で華やかな絵柄に仕上げられた「手書き染め」や「絞り染め」で表現される着物の柄です。お着物の花の絵柄を「華やか」と表現できるように、」個性的な色遣いやデザインが特徴になります。

「辻が花」のお着物の絵柄は、伝統的な手法で描かれており、とても高度な技術が求められます。とても高価な柄は数千万円のお着物もあり、振袖や訪問着問わず人気が高く、古典柄やモダン柄に頻繁に使われる花柄です。最近では、「辻が花風」として安価なプリントとミックスしたリーズナブルな辻が花柄も人気があります。

4.振袖の柄が少ないのは地味??

最近の振袖の傾向としては、柄の一つ一つが大きめで色もハッキリとして原色が使われています。これは、振袖のトレンドで「レトロ」や「和モダン」が流行ったことが理由となっています。

けれども、振袖は帯や半襟などのトータルコーディネートが魅力の衣服ですので、柄が少ない振袖が地味だとも思いません。柄が少ない振袖には、シックで大人っぽい着物独特の良さがあります。

まとめ

「着物が好き」という方の多くは、振袖やお着物のきれいな色や絵柄に魅力を感じていることでしょう。さまざまな花に花言葉があるように、着物にもそれぞれの絵柄に込められた意味があります。ご自分のお着物や購入を考えておられるお着物が、魅力的な意味を持っていることを知るともっと愛着がわくはずです。ぜひ、ゆっくりとお着物の柄を眺めてみてください。

着物の文様には、四季や冠婚葬祭に特別な気持ちを持って接する、伝統的な日本人の心が表されています。最近ではモダンなデザインも多くなり、着物の世界がますます楽しくなってきています。せっかく着物を着るなら、ぜひ文様に込められた意味を知って、心から豊かに着物を着こなしてみてはいかがでしょうか。